研究概要 |
本科学研究費により、Pt,Au,Cuなどの各単結晶ロッド(直径約8mm、長さ約25mm)を購入した。その中からこれまでに、Ni(755)、Pt(7911)試料面をX線による方位決定後に切り出して実験を行った。これまでに、Ni(7911)試料表面で放射光を利用した角度分解光電子分光の測定を行い、ステップに固有な1次元性の強い電子準位を見出し、それが関与した興味ある表面物性の研究を行ってきた。本研究では、表面のステップに局在した電子状態がNiの他の結晶面上でも出現するかどうか、さらには、他の元素のステップ表面にも現れるのかどうかを調べることに重点をおいて実験を行ってきた。はじめに、階段状の試料表面の平坦なテラス部がNi(7911)と同じ原子配置であるが、ステップが並ぶ結晶方位が異なるNi(755)表面について角度分解光電子分光の測定を行った。その結果、(755)表面上のステップにも固有な電子状態を見出すことができ、その対象性、分散関係、分子の吸着に対する活性度を調べることができた。この表面でも、フェルミ準位の近傍にステップの電子準位が出現し、ステップを昇降する方向には分散がないために、(7911)表面の場合と同様に1次元性を示していることがわかった。さらに、酸素分子の吸着に対する活性度の点では、このステップの電子準位は、テラス部分に現れる2次元の表面電子準位と同程度であることがわかった。これは、(7911)表面のステップの電子準位がテラス部よりも活性度が非常に大きかったことと比較すると、異なった結晶表面上のステップにも1次元性の電子状態ができるが、それが現す物性はステップの構造に強く依存していることを示しており、非常に興味深い。 現在は、Pt(7911)試料表面を調べるているところであり、今後、他のステップ表面の測定を続け、それらの結果を集約することにより、ステップに局在化した1次元性の電子状態の物理が確立できると考えている。
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