本研究は、強磁場下における2次元電子系の発光理論の構築と発光エネルギーの特異な磁気振動の起源を明らかにすることを目的とする。これまでの研究で明らかにしてきたことは、遮蔽交換効果とクーロン・ホール項の相殺のために基底状態電子への電子間相関効果の磁場依存性は弱く、振動せずにほぼ一定である、一方、光励起ホールへの多体効果は顕著な磁場依存性を示し、振動位相の方向を決定する。本年度の研究により明らかにできた点は 1.アクセプタ添加の単一ヘテロ接合における束縛光励起ホール再結合と電場誘起の非対称量子井戸の自由ホール再結合発光エネルギーの計算を行い、GaAs/AlGaAsヘテロ接合の実験との比較を行った。このことから光励起ホールの置かれた状況を介して磁気振動の位相を制御できる可能性があることを示した。 2.電場印加の傾斜(非対称)量子井戸の2次元電子系の磁気発光エネルギーの計算を行い電場強度による振動位相の変化の予測を行った。光励起ホールと2次元電子ガスの位置関係により振動の位相が完全に反転することを示した。この挙動が観測されるなら我々の予測の正しさを確認できる。 当初計画した分数量子ホール効果領域の研究は本質的に多体問題であり、解決が難しく進展していない。これを除くなら、研究のほぼ3/5を終了したことになる。
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