| 研究概要 |
二次元電子系における量子ホール効果状態の研究は,輸送現象に加えて,磁気ルミネッセンスや非弾性光散乱など光プローブを用いた励起構造や新しい電子相の研究が進展している.本研究は量子ホール効果領域にある二次元電子系の発光理論を構築し,発光エネルギーの特異な磁気振動の起源を明らかにすることを目指してきた.成果を次の3点にまとめる;
(1)電子の自己エネルギーの遮蔽交換効果項とクーロン・ホール項の磁気振動位相は打ち消しあい、電子自己エネルギーは磁場依存しない.一方、クーロン・ホール項のみの光励起ホール自己エネルギーは顕著な磁気振動を示し,発光エネルギーの振動の様相を決める.
(2)電場誘起非対称量子井戸の光励起自由ホール再結合発光,
電子遮蔽効果は電子とホールの位置関係に非常に敏感である.電場強度に応じて電子とホールの位置関係が変化し遮蔽効果が変わる.電場誘起の振動位相の反転を予測した.
(3)不純物に束縛された光励起ホール再結合発光,
ヘテロ接合界面からある距離隔たった位置に添加されたアクセプタ不純物に束縛された光励起ホールとの再結合発光エネルギーの磁気振動を計算した.Kukushkinらによりなされた測定結果と半定量的な比較を行うことができた.
今後、数値的対角化法の結果と摂動論にもとづく自己エネルギーの比較から磁気振動現象へ電子相関や分極遮蔽の効果がどの様に関与するかを明らかにできよう.
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