平成7年度では、先年度の成果をもとに超イオン伝導機構の理論的解明を中心に据えて本課題の総括を行った。 複数の原子が結合して一つのイオンをつくると、結晶内のそのイオン(多核イオン)は回転の自由度をもつために格子上にフェノンと似たリブロンという特別の励起ができる。一方、格子内のキャリアイオンは外乱が加わると新たな平衡状態に向かって再分布しようとしてイオン緩和モードという時間とともに減衰する波状揺らぎが生じる。この両者が結晶内で共存するとある特別の結合が起こり、前者の励起は崩壊して運動量とエネルギーは後者に移り、イオンは並進自由度の獲得とキャリアの生成即ち超イオン伝導状態が実現するという先年度のアイデアを通常のフォノン格子に拡張して理論化を進めた。キャリアイオンはいつもフォノンと共存しており、イオン輸送の原因はフォノンと考えられるからである。 フォノンの励起に対しても、それがイオン緩和モードと結合すると超イオン伝導が生成することがわかった。結合の手段として直接結合と間接結合が存在することも明らかになり、それらの結合はフォノンとキャリア集団の波乗り結合として一般化できることも明らかになった。さらにサイト間イオン緩和モードをキャリア密度緩和モードに拡張するとともに、従来の拡散方程式を結晶内の任意位置で成立する微視的拡散方程式に発展させた。 内部励起と緩和モードの結合の手段を具体的に発見に発見(波乗り結合)したことと、結晶内の任意位置で成立する微視的拡散方程式を発見したことの理論的意義は大きい。
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