研究概要 |
1.Co-Pt及びFe-Pt合金やMn_2Sb等の強磁性体について内殻光吸収の磁気二色性を測定した。その結果磁性原子の内殻光吸収では、各物質特有の構造を持つ非常に顕著な磁気二色性が観測された。一方、新たに非磁性元素の内殻光吸収においても、強度は弱いが特徴的な磁気二色性が観測された。これは、磁性原子間の交換相互作用の起源である、非磁性原子の電子状態のスピン依存性に関する情報を与えるものである。 2.一方、光電子分光と逆光電子分光で磁気二色性やスピン偏極測定の際に必要な、試料を残留磁化させる機構を開発中である。本研究では、最近注目されている空芯コイルにパルス的に大電流を流す手法を用いるが、その装置のうちパルス電流発生装置が完成した。また、磁場シールドを施した小型の真空槽中に磁化機構を設置した磁化チェンバーも6年度中に完成する。 3.来年度はまず、KEK-PFのBL-19Bにおいて単結晶強磁性体試料を上記の残留磁化機構で磁化し、スピン偏極価電子帯および内殻光電子分光を行う。一方、KEK-PFのBL-2B,BL-28U,AR-NE1において、同様に残留磁化した試料について直線又は円偏光を使った内殻光電子分光の磁気二色性を測定する。最後に、これらの結果と本年度の実験結果を元に、クラスター模型を用いた解析によって局所的な電子状態を解明するとともに、スピンに依存したバンド構造を明らかにし、磁性を担う電子状態を総合的に議論する。
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