研究課題/領域番号 |
06640443
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今田 真 大阪大学, 基礎工学部, 助手 (90240837)
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研究分担者 |
菅 滋正 大阪大学, 基礎工学部, 教授 (40107438)
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キーワード | 強磁性体 / 合金 / 金属間化合物 / スピン偏極光電子分光 / 磁気円二色性 / 高エネルギー分光 / クラスター模型 / 電子状態 |
研究概要 |
強磁性体中の磁性原子および非磁性原子の電子状態、特に局所的なスピンや軌道角運動量の情報を得るために、偏光を用いた高エネルギー分光を用いて下記のような研究を行った。 まず、Nd_2Fe_<14>BについてFe 2p内殻とNd 3dおよび4d内殻吸収(XAS)の磁気円2色性(MCD)を測定した。Fe 2p XASのMCDからは、Fe 3d電子の〈L_z〉/〈S_z〉が約0.1であることが分かった。一方、Nd 3dおよび4d XASからはNd 4f電子状態は、原始的な性質を強く残していることが明らかになった。 CoPt_3でPt 4f XAS MCDにおいて非常に特異なMCD形状が見つかり、Fano効果を取り入れたクラスターモデルによる計算でよく説明できることが分かった。また、解析からPt 5d電子の〈L_z〉/〈S_z〉が約0.6であることが分かり、Fano効果が顕著で磁気光学総和則が適用できない場合でも、上記のような計算で軌道角運動量の寄与を見積れることを明らかにした。 CoS_2においては、Co 2p XAS MCDから、Co 3dの〈L_z〉/〈S_z〉が約0.2で、強い結晶場にもかかわらず有限の軌道角運動量の寄与があることが分かった。これは、基底状態のクラスターモデルによる計算で定性的に再現でき、その起源は電子間相互作用によるものと考えられる。一方、Sの3p XASにおいても微小なMCDが観測された。これは、定性的には非占有バンドのCo 3d部分状態密度の交換分裂によると考えられるが、定量的な解釈にはバンド計算の結果を用いた詳細な計算が必要である。 以上のような、磁性原子のみならず、非磁性原子の電子状態についての情報から、強磁性体の電子状態の総合的な理解が深まったと考えている。
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