提出した研究計画調書の研究計画・方法で平成6年度には「自由な金属クラスター、超微粒子の価電子系の集団運動の形成」の研究を行うと記した。これに沿って、これまでに研究した事を以下に箇条書きで示す。 (1)Liの原子から分子、クラスターを経て超微粒子の光スペクトルの測定 今回の研究で、初めてLiのガス中蒸発でできた蒸気相の時間分解・空間分解スペクトルの測定を行い、原子、二原子分子、クラスター、超微粒子の電子状態を表すスペクトルを得た。特に、クラスター、超微粒子領域のスペクトルには価電子系の集団運動モードによる光プラズマ共鳴吸収が現れており、その共鳴振動数は蒸発の進行(サイズの増大に対応)に伴ってブルーシフトし、極大振動数を経た後にはレッドシフトし始めるようになった。これは、小さなクラスターでは価電子系の電荷分布が格子イオン系の分布の外側に滲み出ており(エレクトロンスピルアウト効果)、クラスターのサイズの増大とともにその効果は減少して行く事を示している。この測定で得られたスペクトルを現在、イスラエル・ソレク原子核研究センターのR.Ruppin教授がシミュレーションを行なっている。 (2)Naのガス中蒸発相の選択励起時間分解・空間分解分光スペクトルの測定の試実験を行い、励起光の光子エネルギー、蒸気相の関数としてデータを整理中である。
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