平成7年度の研究実績は以下のごとくである。 [1]βカロチン、ジフェニル・ポリエン(オクタテトラエン、ヘキサトリエン、ブタジェン)の溶液、薄膜の吸収・発光スペクトルを室温、低温(77K)で測定し、それぞれのバイブロニック構造を詳しく解析して、有限の長さを有する直鎖型π電子共役系分子の電子状態に関する知見を得た。特に、これらのポリエン分子の光機能性に関係の深い1重項励起状態(1′B_u2′A_g)に関して、昨年度に引き続き、それぞれの分子が孤立している場合と凝集している場合の差を定量的に調べた。 [2]共役系高分子の光異性化の機構とそれに関係する1次元励起子状態の性質を、ポリエン、ポリシラン(σ共役系高分子)、ポリジアセチレン(π共役高分子)について、系統的に調べた。ポリシラン、ポリジアセチレンについては、良質な薄膜作製法が本研究者らにより確立されている。この薄膜試料の1次元励起子状態とそのダイナミクスを非線形光学効果、光誘起吸収効果などの測定により、詳しく解明した。この結果を有限なπ共役長を有するポリエンの電子状態と比較、検討した。 [3]βカロチン、ジフェニル・ポリエンの薄膜の作製を、スピン・キャスト法、分子線蒸着法によって行い、得られた薄膜の構造と光学的性質を評価した。
|