平成6年度に引き続き、試料の複素インピーダンスの測定方法の改良を進めた。 その結果、1kHz〜20GHzの周波数領域、70K〜450Kの温度領域で精密測定が可能となった。現在、測定温度領域を液体ヘリウム温度まで広げる試みを進めている。 この測定系を用いて下記の強誘電性結晶の低周波誘電スペクトルの測定を行ない、次ぎのような結論を得た。 (A)PbHPO_4(LHP)、PbAsPO_4(LHA)の研究 LHPおよびLHAの相転移を引き起こしている不安定モードは臨界緩和モードであり、ソフトモードは存在しない事が示された。 ソフトモードが存在するとしている従来の実験結果は、再検討されなければならない。 (C)三サルコシン塩化カルシウム(略称TSCC)の研究 TSCCの相転移温度付近で観測されてる臨界緩和モードは、相転移点から離れた温度領域で観測されているソフトモードと連続している事を明らかにした。 相転移温度に近づくにつれてソフトモードの減衰が著しくなり、相転移温度近傍では緩和モードと区別できない型へと変化したものと考えられる。 (D)重水素化された酒石酸リチウムタリウム(略称D-LTT)の研究 臨界緩和モードは観測されなかった。LTT、D-LTT共に、その相転移機構は変位型である。 重水素置換率の増加に伴って、この結晶の相転移温度が低温側に大きく移動する事を見い出した。重水素置換率約95%で、相転移温度はゼロK以下になる(相転移が消失する)。
|