コロネン結晶では分子が一次元的に配列し、しかも分子間の距離が著しく短いことから、特異な電子状態が実現することが予測された。吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルは特異な電子状態を反映し、形状が複雑であり、相互の位置関係も単純ではない。 本研究により、波数ベクトルkが零のとき励起子エネルギーが最大となるような、凸型励起子帯が存在することが明らかとなった。このような凸型励起子帯は複数個存在すると推察される結果が得られたが、本研究では最もエネルギーの低い励起子帯につき集中して実験を行った。光励起によって生じたK=0の励起子は短時間の間にk=π/a(aは格子常数)に緩和する。したがって、緩和した励起子が輻射を放出して消滅する際の光学遷移は間接遷移となる。当然のことながら、k=0励起子吸収帯の位置はk=π/a励起子発光帯の位置よりも高エネルギー側にあり、この吸収・発光のエネルギー差は励起子帯幅にほぼ等しい。光学音子のエネルギーを90cm^<-1>とみて励起子帯の値を280cm^<-1>と決定した。また、蛍光減衰時間の温度変化を調べた結果、準一元的最低励起子帯とエネルギーが重なる、隠れた(禁制準位の)励起子帯が存在することが暗示された。 準一次元フレンケル形凸励起子帯の存在する結晶では、k=0励起子が近接して生成され、励起子の多重化が予測される。今後、ポンプ・プローブ分光法により多重励起子を探す計画である。
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