研究概要 |
スピネル構造をもつ銅カルコゲナイド化合物について系統的な研究を行い,これまでの研究で,CuCo_2O_4,CuCo_2S_4,CuRh_2S_4,CuRh_2Se_4,CuIr_2S_4,CuIr_2Se_4の化合物を合成することに成功した. 新物質CuIr_2S_4が230Kにおいて伝導率で3桁の急激な変化を示す金属-絶縁体転移を起こすことを発見した.転移点より高温では,伝導度は金属的で,低温側では温度降下と共に伝導率が急に低下し半導体的である.ヤン・テラー効果に起因していると思われる立方晶(金属相)から正方晶(絶縁体相)への構造相転移をX-線により確認した.また,金属相ではパウリ常磁性を示し,絶縁体相では非磁性である.金属-絶縁体転移を示さない物質CuIr_2S_4との違いを電気抵抗率および磁化率の測定より明らかにした.しかしながら,現状では実験結果を合理的に説明する段階ではないので,更なる研究が必要である。 CuRh_2S_4,CuRh_2Se_4は金属-絶縁体転移を示さず,金属的であり,低温で超伝導を示す.これらの物質はヤン・テラー効果に起因する金属-絶縁体転移を起こす寸前の状態にあると考えられる.低温では,静的なヤン・テラー歪を起こさずに金属的な状態に留まったので,大きな電子-格子相互作用による超伝導を実現していると考えられるのでRhとの混晶系の金属-絶縁体転移と濃度xに関する相図を完成させる計画である.
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