研究概要 |
1992年,新物質CuIr_2S_4が230Kにおいて伝導率で3桁の急激な変化を示す金属-絶縁体転移を起こすことを発見した.転移点より高温では,伝導度は金属的で,低温側では温度降下と共に伝導率が急に低下し半導体的である.ヤン・テラー効果に起因していると思われる立方晶(金属相)から正方晶(絶縁体相)への構造相転移をX-線により確認した.しかし,結晶の歪の方向と大きさから単純なヤン・テラー効果が起こっているとは考えられなく,さらに複雑な要因がはたらいていることが分かった.また,金属相ではパウリ常磁性を示し,絶縁体相では非磁性であり,局在磁気モーメントは存在しないことが明らかとなった.転移温度における比熱の異常も観測し,転移熱の実験値が得られた.転移温度の圧力依存性も極めて大きく現在系統的な実験を継続中である.熱膨張率,光電子分光などの実験結果が積み重なってきた.フランスの原子研究所との共同研究でイリジウム原子核のメスバウワ-効果の測定に成功した.アイソーマ-シフトの大きさから,イリジウム原子の原子価(d電子状態)が明かになりつつある.現在,実験結果は2つのモデルで解釈せざるをえないために,あと一歩のところにある.NMRの実験でイリジウム原子核四極子相互作用の大きさが判明すれば,金属-絶縁体転移の機構解明に大きな進歩が期待できる.もしも,原子核四極子相互作用の大きさが50MHz程度であれば,イリジルム原子は3+と5+の混合原子価の状態にあり,この原子価の異なるイリジウム原子の秩序の温度変化により,多くの実験事実を統一的に理解でき,また,フェルベ-(Verwey)転移が理想的な形で実現されている可能性が強い.
|