これまで4f電子系RGa2、参照化合物LaGa2と反強磁性体PrGa2、SmGa2、GdGa2と、5f電子系UGa2のdHvA効果の測定を行ってきた。UGa2は結晶構造がRGa2と一緒で格子定数も同程度の物質であり、4f系との比較を通して5f電子の局在性や遍歴性を調べるために用いた。研究成果を以下に列挙する。(1)La、Ce、Pr、Sm、Gd化合物ともに、4sバンドのフェルミ面は大きさ・形状とも良く一致しているが、dバンドのフェルミ面については、SmGa2では他のものと非常に異なっている事がわかった。SmGa2の場合、フェルミレベル直上にSm^<2+>状態があり、これがd-f混成を通してd-バンドのフェルミ面を異なった形にする原因であると推察した。(2)SmGa2では常磁性状態と反強磁性状態のフェルミ面が明瞭に区別できた。しかし、反強磁性状態では、バンドの折り返しによって作られる小さいフェルミ面を介してのMagnetic Brekakdownによって、dHvA振動のスペクトルが非常に複雑になり、ブランチの同定は困難であった。(3)メタ磁性転移にともなって電子系に交換相互作用が誘起され、数meVのスピンバンドの分裂がLa以外の化合物でみられた。分裂前後の中心周波数の変動や、サイクロトロン質量の変化は観測されなかったが、ディングル温度は増加や減少が観測された。GdGa2では3.9Kから4.9Kへ増加し、一方SmGa2では1.1Kから0.5K物質へ減少した。メタ磁性転移によって長周期の磁気構造の出現や消失に関連することが示唆された。(4)UGa2では40TのdHvA振動が観測された。この軌道のサイクロトロン質量は0.4mであり、これは重い電子系のUGe2のものに匹敵するものであり、これはUGa2の5f電子が遍歴的であることを示唆している。
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