1.三角格子反強磁性体のモデル物質としてRbNiCl_3の単結晶をBridgman法で合成し、特に加熱真空引き等前処理を慎重に行うことにより良質で大型の単結晶を得た。 2.ハイゼンベルグ型三角格子反強磁性体の逐次相転移、スピン秩序構造、スピンの動的揺動を明らかにするために、核磁気共鳴法によりRbNiCl_3の共鳴磁場スペクトルとスピン格子緩和時間の測定を行った。 (1)核磁気共鳴法の特質を利用した巧みな実験方法により、0.2Kのわずかの温度域で中間相が存在し、逐次相転移をすることを明確に確認した。 (2)NMRスペクトルは測定全温度域で3本に分離することを見いだし、磁場、角度依存性からそれらは電気四極子相互作用によることを解明し、2次摂動まで考慮すると厳密に実験を説明できることを示した。 (3)低温相のスペクトルの実験から、スピン秩序構造およびスピン間相互作用について理論的検討を行い、スピン成分間の相互作用の大きさが異なるという新しい相互作用モデルを提案した。 (4)常磁性相におけるスピン格子緩和時間の測定から、常磁性相においてもフラストレーション系磁性体に特徴的な緩和が見られることを明らかにした。 (5)低温相におけるスピン格子緩和時間の温度、磁場、共鳴ピーク依存性を詳細に測定し、4K以下において緩和時間が長くならず、異常に大きな揺らぎが存在することを見いだした。^3Heクライオスタットを用いた0.4Kまでの測定でもこの異常が続き、この緩和機構、揺らぎがいかなるものであるかは今後の課題である。 3.ハイゼンベルグ型三角格子反強磁性体CsNiBr_3のスピン格子緩和時間を測定し、特に、低温相における120°スピン配列での特異な低エネルギー揺らぎの緩和への寄与を解明した。
|