研究概要 |
1.フルポテンシャルLAPWに基づくフローズンフォノン法を用いてブリルアンゾーン(BZ)のX点における縦および横フォノンモードの振動数を第一原理的に計算した.得られた振動数は加圧によりハードニングを示す:45GPaでω_L=231cm^<-1>、ω_T=159cm^<-1>、64GPaでω_L=260cm^<-1>、ω_T=179cm^<-1>. 2.BZ全体の格子振動を、強束縛法で求めた電子格子相互作用を考慮しさらに最隣接原子間の原子間力をフローズンフォノン法で計算したX点の振動数を再現するように定めることにより求めた.得られたフォノンスペクトルから、フォノン振動数の平均値〈ω〉およびフォノン振動数の2乗の平均値〈ω^2〉を計算した結果、圧力増加とともにどちらも著しく増加する. 3.無次元電子格子結合係数λ=(N(E_F)〈ξ^2〉)/(M〈ω^2〉)(Mはヨウ素原子の質量、N(E_F)はフェルミエネルギーE_Fにおける状態密度,〈ξ^2〉は電子格子結合係数の2乗のフェルミ面上での平均値)の値は加圧で減少する.その結果、超伝導転移温度も圧力増加とともに減少する.これは、実験で測定された転移温度の圧力依存性と逆の傾向である.λが加圧で小さくなるのは、N(E_F)〈ξ^2〉よりも〈ω^2)の方が加圧による増加が大きいためである.理論と実験との不一致を克服するためには電子格子相互作用の真に第一原理的な評価が必要であることを示唆する.
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