平成7年度は2つの物質に中心をおいて研究を行った。得られた結果を以下に示す。 1.Ce(Ru_<1-X>Rh_X)_2Si_2の反強磁性転移と体積効果。 この物質はT_N=5.5Kで反強磁性転移を示し、磁場中3.5Tと6Tでメタ磁性的な転移を示す。中性子散乱実験からこの反強磁性転移は、c軸方向に磁気波数ベクトルを持つSDW転移であることが明らかになった。電気抵抗測定では転移温度以下でc軸方向の抵抗が30%も増大し、一定値となるが、a軸方向ではほぼTM^2に従って減少することが解った。これらの結果から、このCDW転移はc軸方向のフェルミ面のネスティングによって起こることが明らかとなり、この転移に伴ってフェルミ面には異方的なギャップが形成されていると思われる。また熱膨張測定から、近藤効果が出現する50k以下で体積が急激に減少することが明らかとなり、T_N以下ではこの急激な減少が消失しほとんど温度変化しないことが解った。この結果から4f電子系においても3d電子系で良く知られているような、moment-volume instabilityによるINVARあるいはanti-INVAR効果が存在する可能性があることが明らかとなった。磁歪測定ではSDW状態の体積変化は非常に小さく、SDW状態が壊れ、常磁性状態(近藤効果によるスピンのゆらぎは残っている)では非常に大きな体積膨張を示すことが明らかとなった。 2.PrCu_2の磁歪と熱膨張 この物質は斜方晶の結晶構造を持ち、結晶場によってエネルギーレベルは9つの一重項に分裂するため、54mKまで秩序は示さないが、約8Kで協力的ヤーンテラー効果による構造相転移を示す。磁化測定から常磁性状態であるにも関わらずc軸方向で異方性軸の転移を伴うメタ磁性転移を起こすことが発見され、この相転移のメカニズムに興味が持たれていた。磁歪測定からこの相転移において非常に大きな格子変形を起こすことが明らかになり、その大きさは最大で10%にも及ぶ。このことから磁場誘起の構造相転移が起こっていることが解り、この大きな格子変形によって結晶場効果が大きく変化するためメタ磁性的な転移が起こることが明らかとなった。
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