パルス磁場における磁歪測定を目標として、キャパシタンス法による磁歪、熱膨張測定装置を開発した。結果的には期間中にパルス磁場下での測定までは到達しなかったが、以下に定常磁場8テスラまでの強磁場で得られた成果を報告する。 1.Ce(Ru_<1-X>Rh_X)_2Si_2の反強磁性転移と体積効果 この物質はT_N=5.5Kで反強磁性転移を示し、3.5Tと6Tでメタ磁性的な磁化の飛びを示す。中性散乱実験から、この反強磁性転移は、c軸芳香に波数ベクトルを持つSDW転移であることが知られている。電気抵抗測定では、転移温度以下でc軸方向の抵抗が30%も増大し、その後一定値となるが、a軸方向ではほぼT^2に従って減少することが分かった。これらの結果からこのSDW転移はc軸方向のフェルミ面のネスティングによって起こることが明らかとなり、この転移に伴ってフェルミ面には異方的なギャップが形成されると思われる。また熱膨張測定から、近藤効果が出現する50K以下で体積が急激に減少することが観測され、T_N以下ではこの急激な減少が消失し、ほとんど温度変化しないことが分かった。この結果から4f電子系においても3d電子系で良く知られているような、moment-volume instabilityによるINVARあるいはanti-INVAR効果が存在する可能性があることが明らかとなった。磁歪測定ではSDW状態の体積変化は非常に小さく、SDW状態が壊れ、常磁性状態(近藤効果によるゆらぎは残っている)では非常に大きな体積膨張を示すことが明らかとなった。 2.PrCu_2の磁歪と熱膨張 この物質は斜方晶の結晶構造を持ち、結晶場によってエネルギーレベルは9つの一重項に分裂するため、54mKまで磁気秩序は示さないが、約8Kで協力的ヤーンテラー効果による構造相転移を示す。磁化測定から常磁性状態であるにも関わらずc軸方向で異方性軸の転換を伴うメタ磁性転移が観測され、このメカニズムに興味が持たれていた。磁歪測定から、この相転移に伴って大きな格子変形を起こすことが明らかになり、その大きさは最大で10%にも及ぶ。そのことから磁場誘起の構造相転移が起こっていることが明らかになり、この大きな格子変形によって、結晶場効果が大きく変化するため、メタ磁性的な転移が起こることが明らかとなった。
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