研究概要 |
1. 3d遷移金属化合物及び強磁性Niの遷移元素原子2p内殻励起3d・3p・3s共鳴光電子放出スペクトルの計算。 CuからMnまでのmonoxide及びTiO_2について、遷移元素原子1個とそれを囲む6個の陰イオンよりなるクラスターに対し、標記のスペクトルを計算した。実験との比較により、系を特色づけるパラメータである有効電子間相互作用、3d軌道と酸素2p軌道間の電荷移動エネルギー、原子間移行積分等を、観測されている3d光電子放出スペクトルとの比較から、曖昧さなく決定した。強磁性ニッケルについても同様の計算を行い、3d光電子放出スペクトルについて、結合エネルギー6eV付近のサテライトのスピン偏極の入射光エネルギー依存性を調べた。また、3p・3s光電子放出のスピン偏極がニッケルの基底状態での多体的3d配置状態をを敏感に反映することを示した。 2.希土類における3d内殻励起共鳴逆光電子放出及び2次光学過程 最近観測されたCeNi_2,CeRh_3のCe3d内殻励起共鳴逆光電子放出スペクトルを、電子間多重極相互作用を取り入れた不純物アンダーソン模型に基づき解析した。その結果、3d内殻正孔が存在するときのCeの4f軌道と周りの軌道との混成の大きさは、3d正孔が存在しないときのそれに比べて、CeNi_2において3倍程度、CeRh_3においても、2倍程度小さくする必要のあることを示した。さらに、CeからTmまでの3価のイオンに対し、3d及び4d内殻しきい値付近でのでの共鳴4f・5p・5s光電子放出スペクトルと3dしきい値付近での4f-3d共鳴X線発光スペクトルの入射光エネルギー依存性、3d内殻しきい値付近での4f共鳴逆光電子放出スペクトルの入射電子エネルギー依存性を系統的に調べた。励起スペクトルの終状態を同定する上で、2次光学過程が有力な方法である事を示した。
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