研究概要 |
本研究ではCrM'X(M'=Fe,Co,Ni X=P,As)について,その構成原子と結晶構造,磁気状態の関係を調べるため,X=PのときCo_2P型構造をとるCrM'P=Asの場合Fe_2P型構造をとるCrM'Asについて常磁性状態,強磁性状態,反強磁性状態を仮定しバンド計算を行った。 Co_2型構造,Fe_2P型構造のどちらの化合物でもM'原子の違いによってCrとM'原子のdバンドの相対的位置が変わるため価電子間の混成が変わり,Cr及びM'原子ののDOSの形状が変わる。求められた非磁性のDOSを基にStoner理論から,大雑把に磁性を推測することができる。特に次のようなことが分かった。 1)CrM'X(M'=Fe,Co,Ni X=P,As)でM'原子は非磁性で,Cr磁気モーメントを担いうる。 2)M'=Niのとき強磁性となる。 これらの結論は次に述べる3つの磁気状態の全エネルギーからの予測と一致する。 CrM'PではCrFeP,CrCoP,CrNiPがそれぞれ反強磁性,常磁性,強磁性となる。CrM'Asについては,CrNiAs,CrFeAs,CrCoAsはそれぞれ強磁性,強磁性,反強磁性状態となるが,後の2つの化合物に対してはエネルギー差が小さく3つのどの磁気状態が出現してもおかしくない。以上の予測は実験結果と一致している。また強磁性あるいは反強磁性バンドから求めた磁気モーメントに関しては,CrM'Xは磁気モーメントのほとんどをCrが担い,単体で強磁性を示すM'=Fe,Co,Niはほとんど磁気モーメントを担っていない。そして強磁性体となるCrNiP,CrNiAsの一分子当たりの磁気モーメントの大きさは実験結果と一致する。
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