研究概要 |
化合物MM'X(M,M'=遷移金属,X=P,As)のうち結晶構造がFe_2P型であるCrM'AsとCo_2P型であるCrM'P(M'=Fe,Co,Ni)に注目し,その磁気的性質を調べるために電子構造を計算した。非磁性状態の状態密度曲線から,磁気モーメントを担うのは単体で強磁性体であるM'原子(Fe,Co,Ni)ではなくCr原子であることが推測できる。しかし非磁性であるM'原子のd電子は,Cr原子のd電子との混成仕方の違いによりCrMnZの磁性に影響している。実際に,非磁性,強磁性,反強磁性状態3つの磁気相の全エネルギーを比較すると,CrNiP,CrFeAs,CrNiAsでは強磁性が,CrFeP,CrCoAsでは反強磁性が,CrCoPでは非磁性が最も安定であるという結果が得られた。CrCoAsでは3つの磁気相が競合している事が分かった。これらの結果は実験結果と一致している。強磁性CrNiAsのCr,Niの磁気モーメントの実験値は0.55,0.65μ_Bであるが,計算値はNiに対し0.11と小さく,Crが1.19μ_Bと磁気モーメントのほとんどを担っている。全エネルギーの格子定数依存性から求めた格子定数の理論値は実験値と良く一致している。 また,最近注目を浴びているハーフメタリック化合物を,次のように理論的に予測した。 1.Ru_2MnZ(Z=Si,P,Sn)は反強磁性相が安定であるが,強磁性にするとハーフメタリックになる。 2.Co_2MnZ(Z=IIIb,IVb,Vb原子),TMnZ(T=Pd,Rh,Z=Sb,Te)においてZ原子の価電子数をかえるとハーフメタリックになる。 3.TMnZ(T=Ir,Pt,Pd,.Rh,Z=Sb,Te)において圧力を加えるとハーフメタリックになる。
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