この研究課題では、アルカリ金属、3d遷移金属に見られる高分解能(0.1a.u.以上)コンプトンプロファイル(CP)の測定値と、密度汎関数法(DFM)に基づく局所密度近似(LDA)での電子状態の記述との不一致を、多電子効果を取り込むことで説明することであった。その方法として、(1)3d電子系に対しては自己相互作用補正(SIC)の効果を調べること。(2)アルカリ金属にたいしては自己エネルギー補正の評価をRPA内で動的に遮蔽したクーロン相互作用を取り扱う(GWA)ことで調べる。ことであった。(1)の評価は貴金属Cu、半導体Si、絶縁体ダイアモンドに対して試みた。SICの評価は各単位胞内の角運動量量子数で区別される軌道のみに行う近似(原子に対して適用され成功している)を用いた。この方法でSi、ダイアモンドについてはエネルギーギャップが良く再現される。これらのCPへの適用の結果は、ダイアモンドについてはかなり改良が見られたがSiについてはほとんど効果は見られなかった。Cuに対して3d電子の束縛性を反映してCPの実験とLDAとの不一致を改良することがわかった。(2)の評価はLiについて、LDAによるFLAPW法の電子状態を基底として、GWAにより準粒子状態を計算し、電子占有関数(N(p))の評価からCPの計算を行った。得られた(N(p))は電子気体モデルのものとはかなり異なり、かなり異方性も見られた。この(N(p))を使って計算したCPは実測値を非常に良く再現することがわかった。今後は基底状態の表現を改良し、この方法を遷移金属へ適用し、3d電子系の(N(p))を評価することをめざす。
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