本年度は、この課題研究の中で、新しいシミュレーションの方法が開発され、スピングラスのように緩和の非常に遅い系に対する計算機実験に大きな威力を発揮することがわかった。 これまでのシミュレーションでは、局所平衡の状態が多数存在する系に対しては、Gibbs平衡によるカノニカル平均を得るのが非常に困難であった。そこで、系のレプリカを複数作り、それぞれ異なる温度の熱浴に浸っているとして、その全体を一つの復号系とみなした拡張ensembleの方法が我々によって開発された。この方法では逐次レプリカの交換を考慮するtrialをシミュレーションの中に採り入れることによって、局所平衡の状態から抜け出すことができるようになっている。 今年度は、この方法の有効性を3次元±Jスピングラス模型に適用した予備的な計算を行ない、この方法の有効性が確認された。したがって、当初予定された研究の本格的始動はこれからの課題として残るが、この方法の開発は、将来的に有望な研究であったと考えられる。
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