長鎖状の脂質分子や高分子は、多様な凝集様式(溶液・融液・結晶・薄膜・ミセルなど)を示し、その動的構造は極めて興味深い。本研究では、界面の動的構造という観点から、脂質や高分子系での秩序構造形成の機構を多面的に検討した。 1.固体-液体界面の構造:高分子結晶界面での秩序形成過程を究明する前段階として、計算機実験による固液界面での分子鎖の凝集様式と分子運動性の研究を行った。固液界面近傍では結晶構造は著しく乱れており分子鎖は大きな運動性を示すこと、他方融液構造は界面近傍では秩序化する傾向があることなどが示唆された。 2.高分子鎖の秩序化の微視的機構:分子動力学法を用いて、高分子鎖の結晶界面での秩序化をシミュレートした。界面吸着鎖の結晶化に対応する二次元空間での秩序化のシミュレーションを行い、ラメラ構造の形成、微結晶核の安定性、ラメラの厚化現象、など基礎的な微視的素過程を明らかにした。 3.接合界面からの拡散と相転移:鎖状分子単結晶の接合界面の光学観察から、鎖状分子の結晶内での拡散現象が直接的に検出できることを見いだし、結晶内長距離拡散の存在を示した。 4.ラメラ界面構造と固相転移:n-アルカンにおいて、低温で新たな構造転移の存在を明らかにし、その特徴的な構造変化(積み重なり転移)の詳細をX線回折を用いて究明した。
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