研究概要 |
大規模な大気の流れには、空気の分子粘性のほぼ8〜9桁倍の大きさにものぼる極めて大きな粘性が働いている,と考えなくてはその運動を説明できない。このような異常に大きな粘性は大気の乱流が原因になって起こると考えられ,過粘性と呼ばれている。この問題は提起以来30年余を経過した現在まで理論的には解明されていなかったが,最近,岡本と岩山は,この問題に非平衡統計力学の手法である線形応答理論を適用することにより,2次元非粘性流体の場合の理論的研究を行い成功した。即ち,現行の気象予報では,計算プログラムの暴走を回避し,しかも,必要な有用な結果が得られるための条件として,プログラム中に経験的に組み込まれているパラメタ値(過粘性係数として分子粘性係数の約10^<10>倍という巨大な値を使用)が実は正当なものであることが初めて理論的に証明された。 岡本・岩山が開発した「2次元非粘性順圧流体における渦粘性の理論」の発展として,2次元減衰性乱流におけるスケーリング理論を再考察し,その数値シミュレーションを行った。その結果,初期段階において発生させられた多数個からなる渦の集団は,(1)コヒーレントな渦の集団に向けて自己組織化する過程,(2)組織化した渦が互いに合体して最終的には互いに逆回転する一対の渦双極子構造を形成する過程,(3)渦双極子が拡散的に消滅する過程,を経過することが実証された。また,この第2段階において成立するスケーリング則は,渦集団の満度ωとその流れ関数ψから構成される量-ωψ/2が保存されており,したがってこの量が系のハミルトニアン密度になっており,その結果としてスケーリング則が成立していることが判明した。更に,これらのスケーリング則に共通に現れるスケーリング指数ξの理論的決定に成功した。また,実験との極めて良い一致をみた。
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