ジャンプ運動、ストレー運動を取り入れたトラッピング拡散模型をコヒーレント媒質近似に基づいた解析的方法で取扱い、様々な動的性質を求めた。まず、動的構造因子は、ガラス転移点以下においてω=0で発散し、ガラス転移と動的転移点の間では、そのω=0における振動数微分がω=0において特異性を示すことを示した。又、高振動数側ではデバイ緩和的に振舞うことを示した。 一般化された感受率にαピーク、βピークが見られること、又、αピークの位置から定められた主緩和時間が、ガラス転移点以下のある温度で指数関数的に発散し、トラッピング拡散模型にVogel-Fulcher点が存在することが示された。さらにガラシアンパラメーターの減衰を表す指数の変化から明確なクロスオーバー温度の存在が示された。低振動数領域の感受率をさらに詳細に解析し、ガラス転移点以下ではαピークがCole-Cole型になることを示し、その緩和時間が指数関数的に発散することを実際に示した。感受率の高振動数、低振動数領域の振舞いから遅い緩和の特徴を知る方法として、感受率の実部の対数に対してその虚部の対数をプロットするlog-コール・コールプロット法を開発した。さらにソフトコア系の超長時間分子動力学シュミレーションを行い、得られた動的構造因子、感受率の振動数依存性が、トラッピング拡散模型でよく再現されることを示し、またβピークに対応する緩和がデバイ型緩和と見なせることを示した。
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