研究概要 |
(1)量子ドットの電流電圧特性と雑音については,近藤効果の可能性ついて予言し,国際磁気学会において発表した。エネルギーに換算した電圧と近藤温度を比較し,前者が大きいときは,電流とその雑音は印加電圧の対数に依存する。また,後者が大きいときは,印加電圧の奇数べきの多項式で表される。 (2)2個の量子ドットを並べると,ジュール熱の放出を伴わない抵抗器を作れることを見いだし,モデルを提唱した。それぞれの量子ドットが2つα準位を含み、一方の量子ドットの上の準を他方のドットの下の準位が占有されているときに,クーロン相互作用により,電子がシ-ソ-運動するという量子効果を使ったもので,11の第1論文で発表したほか,特許も申請中である。 (3)量子ドットのホール抵抗がある強い印加磁場において消失することが実験的に見いだされていた。われわれは,磁場化の量子ドット中の電子の波動関数を計算することにより,量子ドット中でいわゆるスキッピング軌道ができること,また,それによる磁気フォーカス現象が生ずることを見いだし、さらに、実験結果を説明できることに成功した。詳細は,11の第2論文で発表される。 (4)量子ドットの内部構造とクーロン相関の解明には,近藤効果の理論が参考になる。これまで,相互作用するスピン系の近藤効果については十分な考察がなされていなかった。スピン間の相互作用の強いと,近藤効果が消失するということが一般的な予想であるが,われわれは,スピンが感じる有効磁場が時間的に変動すると,近藤効果が消失しないことを見いだした。
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