研究概要 |
今年度は,本研究計画の最終年度に当たっており,また,重点領域研究「単電子デバイス」のはじまりの年であった。したがって,今年度は本研究計画のしめくくりと,重点領域研究への橋渡しを行った。本研究計画に関連しては,非対称な量子ドットの電流電圧特性の履歴現象がおきることをフリーデル総和則を使って電流電圧特性を調べることによって表した。この仕事は,大学院生の水野孝行の研究の総仕上げであった。フリーデル総和則は,不純物に束縛された電子のとフェルミ準位にある電子の散乱による位相のズレとを結びつけるものである。通常は,束縛電子を知って位相のズレを求めるという使い方をするのに対し,水野は量子ドットの場合位相のズレは求めやすいので,それを使って量子ドットに束縛された電子数を求めるという使い方をした。束縛電子が決まれば帯電エネルギーが計算でき,それによって電流に対する帯電効果が計算できる。これはフリーデル総和則のユニークな使い方であるとして,非公式ながら,他の研究者から評価を受けている。 この研究計画を通じてわれわれのグループが習得した基本的な概念は重点領域研究「単電子デバイス」の量子ドット中の強い電子相関を計算するために使われた。
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