定圧条件を組み込んだCar-Parrinello法プログラムを作成し、ダイヤモンド構造を持つシリコン8原子の系でシミュレーションを行なった。その結果、実験条件を変化させることにより、体系がより安定な構造へ自発的に変化することを示すことができた。 より具体的には、次の点を明らかにした。 技術的な側面では、運動方程式の積分にどの数値積分法を用いるとよいのか吟味した。予測子-修正子法では、波動関数の規格直交条件を満足させながら高い精度の計算を行なうのは難しかった。定圧法では力に速度に依存する項が現われるため、通常のシミュレーションでよく用いられるVerlet法を用いることができない。反復的に速度の値を補正しながら計算を行なう反復Verlet法を用いることにより、充分よい精度を保ちながら計算が実行できることを示した。 Appelbaum及びHamannの提案した局所的な擬似ポテンシャルを用い8個のシリコン原子からなる体系でシミュレーションを行なった。圧力の値をOGPaとし、低温で計算を行なうとダイアモンド構造を保つことを確認した後、高圧又は高温の条件に変えると六方最密構造に似た対称性の異なる構造に変化した。エンタルピーの値の吟味により、実は、上に得られた構造の方がOGPa、OKにおいてもダイアモンド構造より安定であることを見つけたが、これは計算に用いた局所的な擬似ポテンシャルが良くないためと考えられる。 この研究では電子状態を考慮したCar-Parrinello法を用いた計算でも定圧法と組み合わせることにより、構造変化を再現できることを示すことができた。
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