研究課題/領域番号 |
06640515
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研究種目 |
一般研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
相澤 洋二 早稲田大学, 理工学部, 教授 (70088855)
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研究分担者 |
宮坂 朋宏 早稲田大学, 理工学部, 助手 (90257246)
原山 卓久 早稲田大学, 理工学部, 助手 (70247229)
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キーワード | 非線形格子振動率 / 誘導現象 / 1 / fゆらぎ / 淀み運動 / リーマン曲率 / ガウス曲率 / FPU-βモデル / 高次元近分ハミルトン系 |
研究概要 |
非線形格子振動系では、一定の振動状態が長い時間続いた後、突然別の振動状態に遷移し、エネルギー当分配された熱力学的平衡状態に近付いていくという誘導現象が普遍的に見られる。このような誘導現象をともなう格子振動系の時間発展をスペクトル解析すると、1/fゆらぎが得られた。そこで、水晶発振子の実験などさまざまな実験で観測されている1/fゆらぎの起源は、非線形格子振動系に代表される高次元近可積分ハミルトン系の淀み運動にあると考えることができる。 3以上の自由度を持つ高次元系は、ポアンカレ断面も4以上の次元を持つので、2以下の自由度の系のように視覚的にとらえることができない。しかし、幾何学的に解析することは大変有効であるので、高次元ハミルトン系の軌道を、あるリーマン計量を持つ多様体上の測地線として定式化し、軌道の局所的な不安定性の指標であるリーマン曲率やガウス曲率などを詳しく調べることで、高次元系を幾何学的にとらえることをこころみた。 モデルとして、数十個の振動子が一次元的に4次多項式のポテンシャルで結合した系を用いた。これは、一般にFPU-βモデルとよばれている。この系の運動方程式を数値的に解き、曲率を計算した。その結果、誘導現象が起きるときには、軌道は多様体上で曲率が非常に小さい負の値の部分を通ることを解明した。これは、格子振動系の誘導現象と1/fゆらぎとをハミルトン系の淀み運動と考えることが正しいことを示したばかりでなく、高次元系をとらえるための有力な新しい視点を提供した、重要な成果である。
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