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1995 年度 実績報告書

高分子結晶における二次相転移の発現機構と臨界現象の解析

研究課題

研究課題/領域番号 06640527
研究機関京都工芸繊維大学

研究代表者

伊藤 孝  京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (60107159)

研究分担者 小西 孝  京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (70027861)
キーワード偶数-数数ナイロン / フッ素系共重合体結晶 / 一次相転移 / 二次相転移 / 比熱異常 / 臨界現象 / 平均場近似 / イジングモデル
研究概要

高分子結晶において、二次相転移、もしくは臨界点の存在が厳密に証明された例は国内外を通じてこれまで無かつた。私達は、ナイロン66とフッ素系共重合体結晶において二次相転移的挙動が生じることを発見し、その成果に基づいて本研究を計画した。本研究の成果を以下に記す。
1.偶数-偶数ナイロンにおいて、アミノ基間のCH_2基が6個であることが相転移を起こす必要条件であることを実験的に示した。カルボキシル基間のCH_2基が6個か0個以外の場合は、相転移が連続的変化に移行するが、カルボキシル基間のCH_2基が6個よりも少ない場合には相転移の様相が強く残る。
2.エネルギー計算より、6個のCH_2鎖がall-trans以外にも安定な4種の形態をとることが分かツタ。
3.矩形格子イジングモデルとのアナロジーを持つ理論解析より、この構造変化は分子間相互作用により相転移と連続変化のいずれの様相をも持ち得る、秩序-無秩序型の構造変化であることが明らかになつた。
4.ビニリデンフルオライド/トリフルオロエチレン(VDF/TrFE)共重合体結晶では、VDF42%試料が高温・高圧下で一次・二次相転移を示したが、これはナイロン66に継いで、二番目の発見例である。
5.エネルギー計算から、分子間相互作用を三種類に単純化した平均場近似で比熱計算を行い、VDF55%以下の試料ではVDF分率と結晶厚の増加とともに転移点が下降するという実験事実が初めて説明できた。
相転移には静電相互作用が必要なこと、VDF率の高い試料は連鎖長の長い構造であることが分かつた。
以上の結果は、高分子結晶としては世界で始めての、二次相転移と臨界点の厳密な発見・証明であるとともに、理論的取扱が現実の高分子結晶の相転移を実験結果との整合性を保ちつつ分子論的に簡明に記述できた最初の例である。本研究が、現実に存在する二次元系の臨界現象として、今後、相転移の理論分野に強い刺激を与え、高分子物理学の分野に新たな展開をもたらすことを期待するものである。

  • 研究成果

    (5件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (5件)

  • [文献書誌] Itoh,Takashi: "Crystalline Phase Transitions in Polymers" Current Polymer Research. 40. 83-84 (1994)

  • [文献書誌] Itoh,Takashi: "Critical Phenomena in a Polymer Crystal" Joural of the Physical Society Japan. 63. 2833-2834 (1994)

  • [文献書誌] Matsuda,Hidehiro: "Calculation of Intra-and Intermolecular Interaction Energies in Fluoropolymer Crystals" Reports on Progress in Polymer Physics in Japan. 37. 221-224 (1994)

  • [文献書誌] Itoh,Takashi: "Ferroelectric Hysteresis Behavior and Structural Property of Even-Numbered Nylon Film" Japanese Journal of Applied Physics. 34. 6164-6165 (1995)

  • [文献書誌] Itoh,Takashi: "The Polymeric Materials Encyclopedia" CRC Press, Inc.(in Press), (1996)

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公開日: 1997-02-26   更新日: 2016-04-21  

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