研究概要 |
できるかぎり低いエネルギー領域での一電子・二電子移行過程の微分断面積測定を目指し,実験装置の設計・制作を行った。用いるイオン種は希ガスおよびC,N,Oの2価・3価イオンであり,標的は希ガスを予定している.しかし,今年度は,新実験装置を用いての実験データがでるところまでは到達できなかった. 実験装置は,イオン源・超音速ノズルビーム・検出器から構成されている.今年度は新たに設計した電子ビーム型イオン源(EBIS:Electron Beam Ion Source)の建設に着手した.これは磁場で収束した電子ビームを用い,超高真空中でその空間電荷中に捕らえられた試料イオンを逐次電離することによって多価イオンを生成するものである.実際には,超高真空装置の外部にソレノイドを置くなどして,構造を簡便な形にしたものとした.これまでに,必要とされるコイル及び超高真空槽の試験が終わり,目的とする0.15Tの磁場と10^<-8>Pa台の真空度が得られた.現在,他の部分の組立・調整の段階であり,近々測定が開始されよう. 測定を計画している系についての予備実験として,従来型の装置を用いて,Ar^<2+>-Kr系での一電子移行過程について測定を行ったところ,軽いイオンと重い標的の組み合わせでは散乱信号が広角度に分布することから非常に弱くなり,高い検出効率をもつ位置敏感型の検出器の必要性が再認識された.来年度は,この種の検出器の開発にも着手する予定である.
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