研究概要 |
1.実験装置 既存の交叉ビーム法わ用いたイオン衝突装置に,小型電子ビーム型イオン源(EBIS)を新たに製作・設置し,低エネルギー領域(10eV)における一電子移行過程の微分断面積測定を開始した.製作したEBISは,電子収束用の磁場内に置かれた電子銃・イオン化領域・イオン引出し部・イオン輸送系から構成されており,これらは到達真空度2×10^<-10>Torr以下の超高真空槽内に配置されている.これにより,C,N,Oについては1〜5価イオンが,またArについては1〜9価イオンがこれまでの所得られている.質量分析した後のイオン強度は,O^<2+>,O^<3+>については0.1nA程度であったが,エネルギー選別・コリメートし,更に10eV領域まで減速すると,実験に用いることのできるビーム強度は1pA程度まで減少してしまう.しかしこの強度は,同種の実験に於いて使われてきた速度器を用いた反跳イオン源によって生成されるビームの強度と同程度かそれ以上であり,低エネルギー多価イオン衝突実験が小規模の施設でも可能となったことの実験的な意義は大きい.また,EBISによって得られたビームは,その内部状態がほとんど基底状態にあることが知られており,この点も反跳イオン源を用いた実験よりも優れている. 2.測定結果 EBISにより生成されたO^<2+>イオンを用いO^<2+>-He系での一電子移行過程の微分断面積をE_<cm>=10eVで測定した.従来型のイオン検出器を用いての測定であったため,測定されたO^+の角度分布に構造は見られたものの統計精度が十分でなく,理論計算との詳細な比較はできていない.検出効率を向上させた位置敏感型検出器が決定的に必要であることがわかり,その設計に着手した.
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