この研究計画では主に非線形平衡解の数値計算とその平衡解の線形安定性を調べ解の分岐の構造を詳しく調べることにより、ベナ-ル対流における形の形成の機構、遷移とカオスの発生、乱流状態における速度場・温度場の構造を明らかにすることを目的として研究を行った。具体的にはつぎの4つの研究に分けられる。 1.無限に広い水平流体層中で発生する熱対流の形の形成の機構を調べるために、弱非線形理論を用いて流体の基礎方程式から振幅方程式を導出し、その係数を評価した。得られた振幅方程式の性質を詳しく調べることにより、ロール形の対流・六角形セル形の対流等の発生する条件を詳しく求めた。 2.有限の大きさの容器の中の熱対流の発生とその熱対流の線形安定性を調べた。流体層の深さを一定に保ち、容器の幅を大きくしていくと発生する熱対流がつくる渦の数(最も不安定となるモード)が入れ替わることが明らかになった。 3.容器が水平に置かれている場合について数値シミュレーションを行い、熱対流が不安定となって時間的に振動する解に遷移する現象について詳しく調べた。その結果、たとえば正方形の断面の容器中の熱対流においては、最初一つの大きな渦の形の対流が発生するが、下面の温度を上げていくとこの対流は不安定となって、二つの渦が水平方向に並ぶ形の熱対流に遷移し、その後時間的に振動する解に遷移することがわかった。 4.矩形容器が水平面から傾いて置かれているときはどんなに温度差が小さくても熱対流が発生し、その発生は不完全ピッチフォーク分岐となることを弱非線形理論を用いて示した。また、発生した熱対流の平衡解を数値的に求め、その安定性を調べた。
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