研究概要 |
アルゴン、キセノンなどの希ガス液体は放射線検出器の素材として種々の利点を持っており、素粒子実験などの分野では実用されている。しかし理論的には、これまでの実験で得られている値よりさらに1桁程度優れたエネルギー分野能が期待されている。本研究の目的は、液体アルゴン・キセノン電離箱のエネルギー分解能を実験的に研究し、理論の予想する優れた分解能を実現すること、もしくは理論と実験の食い違いの原因を研究し、エネルギー分解能の限界を解明することである。 そのために、アルゴン、キセノンに光電離性分子を添加したときの、電離収量、エネルギー分解能を研究し、エネルギー分解能についてのThomasらの再結合説が当てはまらないことを明らかにした[E. Ehibamura et al, 1995]。また、電離収量、発光光量について調査し、J. Seguinotらの論文にコメントした[M. Miyajima et al, 1995]。さらに、電離収量が多い典型的な例として、光電離分子を添加した液体アルゴンカロリメーターに高速重イオンを照射して電離収量、エネルギー分解能を研究した[M. Ichige et al, 1995]。 今年度は期待したエネルギー分解能がまだ得られておらず、液体検出器の限界を明らかにするという目標は実現できていないが、新たに希ガス純化装置を改良するなど、実験装置の整備を行った。エネルギー分解能に影響を及ぼす回路の雑音などの対策は進んでいるので、今後さらに電離箱の実験を行う予定である。
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