研究概要 |
広島原爆・被爆岩石中の^<36>Cl/Clならびに^<41>Ca/Caの加速器質量分析試料を作成するために岩石試料からのこれらの元素の回収率を求めた。岩石試料(日本地質調査所製、JG-la)からのClとCaの回収率は過去の報告値^<1,2)>の誤差内で100%ならびに81%であった。この結果、現有設備で岩石試料中のClとCaを定量的に回収できると考えられる。 広島原爆・被爆材中の残留放射能測定結果はいずれも線量評価システム1986(DS86)の中性子フル-エンスによる計算値を爆心付近で下回り、1km以遠で逆に上回る傾向を示している。しかし、個々の測定結果はばらつきが大きくどこで計算値と測定値が一致しているのか特定できない。Straumeら^<3)>のコンクリート中の^<36>Cl/Cl測定値は爆心から676mでもまだ計算値を下回っている。この付近で被爆岩石試料を入手できなかったため、爆心から約500mの位置にあったタイルからClとCaを取り出すことを試みた。タイルおよびコンクリート中の^<36>Clの一部は外部のClと入れ替わっている可能性がある。実験に用いた被爆タイルの粉末試料中のCl含有率は最初、約60ppmであったが純水による洗浄によって約20ppmにまで減少した。これは主にタイル中の有機物に付着していたClが流出したためと考えられる。このように用いたタイル試料中の安定なClの含有率は花崗岩試料よりも少なかった。これらの結果をふまえて加速器質量分析で十分な^<36>Clの計数が得られると予想されるCl試料を作成した。同時にCa試料も作成した。今後、さらに遠方の試料を作成していく予定である。 1)S.Terashima,Bulletin of the Geological Survey of Japan,27(1976)185-194. 2)S.Terashima,Analytica Chimica Acta,101(1978)25-31. 3)T.Straume,et al.,IIealth Physics,63(1992)421-426.
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