研究概要 |
残留放射能の測定による中性子フル-エンスの測定を行いDosimetry System 1986(DS86)における中性子線量評価を検証することを目的に広島原爆被爆材中の中性子誘導放射性同位元素の抽出を試みた。同位体比^<36>Cl/Clの加速器質量分析による測定では^<36>Clの検出限界が低く、バックグランドのない測定が可能である。このことから爆心から離れた位置での中性子フル-エンスの測定に有利である。また、本研究者ら^<1)>が爆心付近で測定、計算してきた中性子スペクトルが遠方でどうなるかを知る上で重要な知見が得られる元素である。本研究者ら^<2)>が測定した被爆試料からの塩化銀試料中の^<36>Cl/Clの最小値は^<36>Cl/Cl=6・10^<-13>であり、これは地上距離1[km]においてDS86から推定される同位体比にほぼ同じである。そうした遠方試料について十分な精度で質量分析するには海水塩などで希釈せずに必要量の塩素を抽出できる試料が必要である。また、長年の風化に耐えて安定して存在している塩素のみを抽出しなければならない。そこで塩素含有量の高いコンクリート中に安定に存在していた塩素を回収する方法を実験的に検討した。実験では、ある被爆コンクリート試料を粉末化し100gあたり1000cm^3の純水で5時間攪拌洗浄した。これを5回繰り返した場合、洗浄水中に洗い流される塩素は無視できる濃度にまで低下し、試料中の塩素含有量は安定していることが確かめられた。その安定して存在する塩素含有量は140±4ppmであった。試料は爆心から約1kmで被爆しており、希釈なく塩素を回収することによって充分質量分析できる。質量分析に必要な塩化銀は2[mg]であるが、長時間の反復測定によって精度良く測定できるように10[mg]塩化銀試料を希釈無くコンクリート試料から抽出した。 1)Ruhm, W., Kato, K., Korschinek, G., Morinaga, H., Nolte, E..Neutron spectrum and yield of the Hiroshima A-bomb deduced from radionuclide measurements at one. Iocation. International Journal of Radiation Biology 68(1995)97-103. 2)Kato, K., Habara, M., Yoshizawa, Y., Biebel, U., Haberstock, G., Heinzl., J., Korschinek, G., Morinaga., H., Nolte, E.. Accelerator mass spectrometry of^<36> Cl produced from the Hiroshima bomb. International Journal of Radiation Biology 58(1990)661-672.
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