研究概要 |
3次元的幾何学的複雑さが想定される関東・東海地方の構造(フィリピン海プレートの相模・駿河トラフからの沈み込みと同時に伊豆半島付け根部分での衝突が考慮された構造)に対して、微小地震の震源分布図に基づき3次元有限要素法構造モデルを作成し、この地域の巨大地震の1サイクル程度の期間(約200年)に渡る地殻変動について数値シミュレーションを行ってみた。具体的には、西暦1800年の地殻の基準状態に対する西暦2000年における地殻変動は、陸側プレートに対するフィリピン海プレートの相対運動ベクトル(絶対値:4cm/yr,方向:N40°W)と1854年安政東海地震及び1923年関東地震のプレート境界断層運動や伊豆半島付け根部分でのプレート衝突運動を考慮した「弾性的変形問題」として第一近似的に評価できるという前提に立って数値シミュレーションを試みた。但し、プレート境界断層運動と衝突運動は、プレート境界の剪断弾性カップリング強度分布を与えることによりモデル化している。現在までに、3次元有限要素法モデリングと数値シミュレーションの繰り返しにより、以下の様な結論を得ることが出来た。 1.フィリピン海プレート北端部域で観測されている伊豆半島付け根部分から放射状に分布する主圧縮応力場は、相模・駿河両トラフに挟まれたフィリピン海プレート部分の陸側プレートへの衝突によるものである。 2.伊豆半島北部を中心に同心円状に分布する主伸張応力場は、相模・駿河両トラフから沈み込むフィリピン海プレートのベンディング効果によるものである。 今後は、構造モデルをより実際的なものに改良しながら、測地学的観測データも説明できるものにしていく。又、「粘弾性的変形問題」としての扱いも試みる予定である。
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