研究概要 |
本計画の目的は,粘性率が空間的に非常に大きく変化する流体の三次元空間における非定常対流としてのマントル対流を精度よく数値的にシミュレートするための計算技法を確立し,実際に,この技法を粘性率が温度に強く依存する流体の熱対流のシミュレーションに応用してみることであった.この目標は達成された.即ち、粘性率が温度に指数関数的に依存し,このため全体で3桁半の粘性率のコントラストがある流体の3次元直方体の箱の中の非定常熱対流の数値シュミレーションに成功した.さらに,開発されたプログラムのベンチマークテストを行い,計算の信頼度も確認した.本計画の実施期間中に,世界的に,粘性率が温度に強く依存する流体の3次元非定常熱対流の数値シュミレーションが行われるようになり,一部結果も出始めているが,これらのシュミレーションで用いられている計算技法と比べて本計画で開発された計算技法は精度が高いという特徴を有している.他の多くの研究では,統計的な定常状態における対流の流れのパターンの大まかな特徴を明らかにすることを目的としており,非定常性は,単に数学的な意味での定常解が存在しないため導入されているに過ぎない.従って,これらの研究に用いられている計算技法は,流れのパターンの時間変化を精度よくシュミレートしようという目的には適していない.時間変化まで精度よくシュミレートできるという本計画で開発されたプログラムの特徴は,マントルの進化のような時間変化そのものが本質である現象の研究で特に重要となる.開発されたプログラムは,計算効率の点でかなり問題があるが,近年急速に発達しつつあるベクトル並列計算機に最適化することでこの問題を解決しようと努力しつつある.
|