研究概要 |
本研究の初年度である今年度は,まず地殻変動観測用GPS観測点を整備した.高知大学理学部が所有するGPS受信機4組は高知市,室戸岬,足摺岬,松山市に整備した基準観測点に設置され,京都大学防災研究所が運営する徳島県池田町の観測点を合わせ,すべて電話回線を介して観測とデータ収集がなされている。毎月1日〜10日の期間を基準観測点におけるコア観測とし,これ以外の期間に必要に応じ,受信機を基準観測点から補助観測点へ移設して観測を実施した.今年度に観測を実施した点は計9点で,総取得データは1000日分を越えた.受信機の高性能化,衛星の精密軌道情報の使用,学術用解析ソフトウェアの使用を通じ,10^<-8>台前半の高い観測精度が達成されている. 1990年以降取得された全データを含めた解析を行った.その結果,四国地方はほぼ西南西方向に圧縮されてりること,変位速度は南部ほど大きく内陸部に向けて急激に減少すること,10^<0-7>/年を越える大きな速度で北西-南西方向にひずみが蓄積しつつあること,等が明らかとなった.とくに,四国南部での変動速度がユーラシア,フィリピン海両プレートの相対速度の約8割を占めることが注目され,南海トラフにおける現在のプレート間カップリングは強く,フィリピン海プレートの沈み込みよりユーラシア・プレート先端部が強く圧縮変形していることが明らかとなった.これらの点は1ヶ月を単位とするコア観測からも導かれ,GPS観測により,地殻変動の場の議論が1ヶ月という時間スケールで可能になりつつあることが示された.これらの結果の一部は,すでに日本地震学会誌「地震2」に掲載されている.
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