研究概要 |
今年度は3年計画の本研究の2年目にあたる.基本的には昨年度に引き続いてGPSによる地殻変動観測を継続し,これを並行して現在進行中の地殻変動の検出,南海トラフ沿いのプレート間相互作用の検討,残された主たる誤差要因である大気中の電波伝搬遅延の見積もりを行った.ただし,1995年1月17日に兵庫県南部地震が発生したため,プレート境界領域だけでなく,プレート内部でのひずみ蓄積過程にも注目して観測・解析を進めた. 基準観測点(高知市,室戸岬,足摺岬,松山市)間のコア観測と,5〜6点の補助観測点における臨時観測から,今年度中に1000日分を越えるデータを取得した.解析には学術用解析ソフトウェアと衛星の精密軌道情報を使用し,恒常的に10^<-8>台前半の高い精度を維持している.昨年から行っている高頻度のGPS観測から得た四国地方の短期間の地殻変動は,過去数十年間にわたる測地測量から得られた平均的な地殻変動とほぼ一致する.すなわち,ほぼ北西-南東方向に3〜4×10^<-7>/年の大きなひずみ速度で圧縮されている.ユーラシア・プレート,フィリピン海プレートの相対運動の約8割が四国地方南部での変形に費やされていることから,両プレート間のカップリングは強く,押されるユーラシア・プレートの外縁が強く圧縮変形していることを示している.短期間の変動には時間的な揺らぎのようなものが観測されている.これは,大気中の水蒸気の分布が季節により大きく変動するのに対し,それによる電波の伝搬遅延が完全に補正されていないことを示している.高精度のGPS測位精度が達成されたのに伴い,最終的に決定的な誤差要因は大気中の水蒸気であることが改めて認識された.
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