研究概要 |
今年度は3年計画の本研究の最終年度にあたる.基本的には一昨年,昨年に引き続きGPSによる地殻変動観測を継続し,これと並行して南海トラフ沿いのプレート間相互作用の評価,主たる誤差要因である大気中の水蒸気による電波伝播遅延の検討を行った.これまでの研究との相違点は,建設省国土地理院によるGPS全国観測網の整備が進み観測データと観測成果が公開されるようになった現状を踏まえ,これらを積極的に本研究にも活用したことである.これにより,研究対象を四国地方から西南日本全体まで拡大し,ユーラシア,フィリピン海,北米の3大プレートの相互作用の下での広域の地殻変動の場を議論することが可能となった. GPS観測成果からユーラシア,フィリピン海両プレートの境界である南海トラフにおけるプレート間相互作用の強さを見積もった.その結果,同境界は現在固く結合しており,プレートモデルから予想されるプレート間相対運動の大部分がプレート境界域の変形に費やされていることを確認した.この結果は,プレート間結合が比較的弱くプレート間相対運動のかなりの部分が非地震性滑りによって解消されている東北日本における結果と,非常に対照的である.さらに,四国地方において西北西から北西に向いた大きな観測点変位が,中国地方において量は減少するものの変位方向が顕著に東向きに移行することに着目した.すなわち,この地域は大きなシア-ゾーンを形成しており,アムールプレートに属する西南日本の東進運動が,北米プレートとの衝突やフィリピン海プレートとの相互作用により減速されているため,との解釈を提出した. 成果の一部はすでに昨年秋に発行された国際学術誌において発表した.最後に,本科学研究費補助金による研究の総括として,3年間にわたる研究成果を報告書として印刷・公表した.
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