研究課題/領域番号 |
06640557
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 内蔵進 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助手 (90191981)
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研究分担者 |
青梨 和正 気象研究所, 予報研究部, 主任研究官
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キーワード | 梅雨前線 / 亜熱帯前線帯 / 東アジア水循環 / 異常気象と水循環 / 前線帯と水収支過程 / アジアモンスーンと梅雨 / GEWEX / 日本の夏の天候変動と水循環 |
研究概要 |
1.顕著な高温・乾燥年の1994年5月〜8月について、比較のために、鉛直高分解能高層気象データ、降水量データ等を収集・編集した。 2.1991年7月前半の淮河流域での大洪水時には、南からの前線帯への多量の水蒸気流入のみならず、その流域スケールでの効率的な収束と集中性があった。これは過去35年ぐらいの中でも特に顕著であった。それらには、西偏した上層トラフの南方に隣接して、対流圏下層のみで明瞭な「弱い低温域」の維持が重要な役割を果たした可能性がある。また、淮河流域ではその大雨に応答して流出量の急増がすぐに見られたが、長江中流域では一旦流域に貯留された後、盛夏期に流出が最大になるなど、流域水収支過程の違いも明らかになった。 3.マイクロ波放射計データ(SSM/I)による海上も含めた降水量分布の解析によれば、1993年の梅雨前線帯では120E-140Eの梅雨前線帯全体で、1890億トン/5日もの大きな降水量がある期間があり、(94年は、同じ領域で500〜700億トン程度)、しかも、南北300km程度の領域に集中していた。そういう状況が8月にもしばしば現れると同時に、台風に伴う降水の寄与も少なくなかった。この冷夏・大雨年には、梅雨前線帯付近の対流圏下層での南北温度傾度が平年に比べて極めて大きく、上層の寒冷トラフの南偏も著しかった。しかし、北半球の寒帯前線帯(移動性高低気圧活動域)は60N以北と、1994年に比べて遥か北方にあり、これが、南の亜熱帯高気圧域からの多量の水蒸気輸送に加え、8月になっても停滞性の著しい前線帯が日本付近で維持された重要な因子の1つと考えられる点が明らかになった。 4.1994年の中部・東日本では、台風・秋雨前線に伴う降水で秋には渇水傾向が緩和されたが、95年は夏の渇水が逆に深刻化した。この違いに関わる秋の亜熱帯高気圧や大陸からの寒乾気の侵入過程は、年によってかなり異なることが明らかになり、今後解決すべき重要な問題を提起した。
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