北極スバールバルのマイクロ波放射計はトラブルがあり平成6年度からデータが得られていない。しかしレーダーの観測は順調に行われ雲の特性についての情報は得ることが出来た。この観測から1993年から1995年の雲降水の月ごとの特徴を調べた。降水量、レーダーエコーの出現頻度から見て冬1月頃、夏6月頃に値の小さい月がほぼ毎年現れていた。ところが、月平均雲量の変化では、冬1月頃は同様に値の小さい月が見られたが、夏6月頃は逆に値の大きい月を示していた。これらの結果から次のことが予想される。冬1月頃には月平均雲量及び月降水量の少ない月がある。この期間は北からの水蒸気の少ない気団に覆われている期間であろう。一方夏6月頃は月降水量は少ないが月平均雲量は多い。即ち降水を伴わないような雲の出現頻度が高く、降水を伴う雲の出現頻度が低い月があることを示している。降水を伴うような強い対流雲が形成されるほどではないが、ある程度の水蒸気の供給が続く期間があると考えられる。南極域については、1989年のDMSP衛星のマイクロ波データについて調べた。マイクロ波データから気柱雲水量、気柱水蒸気量を見積もる時、海氷がその領域にあると見積もりが困難になる。現在1989年1年間の毎日の昭和基地沖のマイクロ波データの分布を調べ、海氷の影響の無いどの領域について季節変動を調べるのが良いか検討中である。この結果に基づき平成8年度に気柱雲水量と可降水量の季節変化を調べる予定である。またDMSP衛星のCD-ROMデータについては1992年からフォーマットが変更になり、読み出しプログラムを変更する必要が生じた。このため当初計画に比べデータの解析が遅れているが、新しいフォーマットのCD-ROMに対する読み出しが出来た。平成8年度には上記に述べた北極域のレーダー観測で得られた雲の特徴について、衛星の雲水量データと比較する予定である。
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