1987年から1995年のDMSP衛星のSSM/Iのデータを利用して、南極昭和基地の沖合いの雲水量と水蒸気量の季節変動、経年変動の解析を行った。1988、1989年は昭和基地で気象レーダ、マイクロ波放射計等を用いた雲降水の観測が行われており、この期間を特に詳しく解析した。北極域については1992年から1995年のSSM/Iのデータの解析を行った。 南極域の結果を示す。昭和基地で低気圧性の降水が観測されたときは、22、37GHz(それぞれはほぼ水蒸気量、雲水量に対応)の高輝度温度部分が昭和基地に近づいているときで、この部分は基地に近づくにつれて広がっている。またSSM/Iデータから、この部分の東側では雲水量は少なく西側では雲水量が多いことが分かる。これは昭和基地のレーダで見られるバンド状構造の通過の状態と良く一致していた。SSM/Iデータから季節変化を見ると、水蒸気量は2月頃にピークを持つのに対し雲水量は10-12月頃と2-4月頃の2つのピークが現れる。昭和基地の観測で降水量に大きな差があった1988年と1989年の海氷縁付近のSSM/Iデータを比較すると、89年は88年に比べて雲水量が多い頻度が高かったことが分かった。特に3-5月、10-11月にその差が顕著である。このことは低気圧活動の違いが少雪年、多雪年をもたらしていることを示している。 北極域、特にスバールバル付近の海上の水蒸気量を見ると5月から10月の期間とそれ以外の期間の2つに大きく分けることができる。また1993年のデータは他の年と違いが大きい。この原因は海氷の張り出しと関係があるかも知れない。それ以外の年については雲水量は最大で0.2kg/m^2である。北極域は陸地や海氷の部分が散在していて南極域以上にデータにサイドローブの影響が大きいと考えられるが、天気図とデータを比較すると低気圧、前線と高輝度温度の部分がほぼ一致する。
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