研究概要 |
赤道対流圏帯状風の準7カ月振動(帯状風QSO)の源の一つとして期待される赤道太平洋の準7カ月振動(海水面QSO)を検出するために、赤道太平洋の海水面変動の日平均値データの解析を試みた。 一般に、赤道太平洋の海水面変動データにはENSOの影響による極めて大きな変動が見られ、それらが海水面QSOの検出をほとんど不可能なまでに妨げて解析上の大きな障壁となった。例えば,赤道太平洋の島嶼データの中には間欠的なQSO状の振動が見られるが、それらの振る舞いはENSOの影響をどうモデル化して除去するかによって大きく左右される。その結果、残念ながらまだ海水面QSOの存在を客観的に実証するにに至っていない。 一方、昨年度に続いて行われている帯状風変動のスペクトル解析およびウエイブレット解析から、赤道対流圏には間欠的な帯状風QSOと定常的な帯状風の8-9カ月振動が共存していることがわかった。後者は帯状風の準2年振動(約30カ月周期のQBO)の非線形性に起因すると思われる、QBOと1年周期変動(年周変化)の重ね合わせ周期、として説明可能であることから、帯状風QSOはこれとは独立に存在することが確認された。 以上の解析に関連して、7カ月周期の倍に当たる大気変動の約14カ月周期変動についても考察を加えた。その結果、この周期を持つ赤道軸のまわりの大気相対角運動量の変動はチャンドラ-ウオブルの大半の励起源である可能性が明らかとなった。この結果は、極潮汐の異常な卓越が風による吹き寄せで生じるとするこれまでの研究と調和するもので、大気変動に約14カ月周期の振動が存在する新たな根拠である。さらに、風励起説に基づくチャンドラ-ウオブルの経年変化の議論は気候変動と地震火山活動のリンクを要請し、地震火山活動と気候変動の関係はここにはじめて裏付けられた。
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