平成6年度は、木星電波偏波VLBI受信機の方式の検討とデータの解析処理プログラムの開発を行った。このVLBI受信機については、全体的な位相特性が重要で局部発振器を構成する高安定周波数シンセサイザーの位相安定度も重要である。そこで、以前開発したVLBI受信器をベースにして、その方式について検討を行った。その結果、市販の受信器を改造することにより、十分条件を満たすことのできるものができるという結論に到達した。 データ解析処理プログラムについては、パソコンやワークステーション上で処理できるものの開発を行った。特に、クロススペクトラムを用いてコヒーレンシーを計算したり、クロスフェイズからフリンジフェイズを求めるプログラムの基本的な部分を完成させることができた。これにより、実際のVLBIデータ解析に必要なプログラム開発の重要なステップを踏むことができたことになる。 右回り左回り両円偏波成分によるVLBIは、木星電波源の位置情報を得るためには非常に重要な観測であるといえる。今年度行ったVLBI受信機の検討は非常に重要で、今後このような観測を組織的に行う場合のモデルケースとなり、非常に有用な情報として外部に提供できると考えている。 また、VLBI解析処理におけるクロススペクトラムによるフリンジフェイズの推定も木星電波のVLBIにおいては初めての試みであり、これによって瞬時にフリンジフェイズの情報を知ることができるので、バースト的な電波放射である木星電波においては大変有効であることがいえる。
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