研究概要 |
今年度は,北上山地の白亜紀深成岩類およびより早期に活動した火山岩類と岩脈類の代表的な試料について,蛍光X線分析装置による全岩主成分および微量成分化学組成の測定とEPMAによる造岩鉱物の化学組成の測定を行った.以上のデータを総合的に検討した結果,以下の2点が明らかとなった. 1.北上山地の白亜紀深成岩類の起源物質には,沈み込んだ海洋地殻・下部地殻・上部マントルの3種類が識別されることが明らかとなった.これらのうち,沈み込んだ海洋地殻が部分溶融することは,非常に若い海洋地殻の沈み込みの証拠となる. 2.より早期に活動した火山岩類や岩脈類には,海洋島玄武岩的な性格を示すアルカリ玄武岩やSrに富む高マグネシア安山岩であるバハアイトに類似した岩石などの存在が確認された.これらの岩石の産出は,太平洋東岸などの現在海嶺が沈み込んでいる地域と共通であり,海嶺沈み込みに関連した火成活動であると理解される. 以上のことから,海嶺の沈み込みに伴うアセノスフェアの上昇により火山岩類や岩脈類が形成され,その後若い海洋地殻の沈み込みによって深成岩類が形成されたというモデルが考えられる.さらに分解能を上げた検討を行うことにより,海嶺沈み込みとその後の沈み込み帯の温度構造の変化の様子を明らかにすることができると期待される.
|