研究概要 |
今年度は昨年度に引き続き,北上山地の白亜紀深成岩類およびより早期に活動した火山岩類・岩脈類について,蛍光X線分析装置による全岩主成分および微量成分化学組成の測定とEPMAによる造岩鉱物の化学組成の測定を行った.また,これらの火成岩類の活動の場となった付加体中に含まれる緑色岩類についても,予察的な検討を行った.さらに,これらのうち重要な試料については,福島大学教育学部のICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)により,さらに濃度の低い微量元素の定量も行った.以上のデータを総合的に検討した結果,今年度新たに明らかとなったのは以下の2点である. 1.大陸地殻の形成機構の鍵を握ると考えられているアダカイト質花崗岩類(沈み込んだ海洋地殻の直接の部分溶融で形成された花崗岩類)が,これまで知られていた北部北上帯だけではなく,南部北上帯〜阿武隈帯北東縁まで連続することが明らかとなった.これは,本地域の火成活動において,非常に若い海洋地殻の沈み込みが重要であったことの決定的な証拠となる. 1.付加体中の緑色岩類のほとんどは,岩石化学的性格が海洋島型アルカリ玄武岩であることが明らかとなった.これは,これらの中に海嶺沈み込みに関連したものが含まれる可能性を示すものとして重要である. 今後は,さらに分解能を上げた検討を行うことにより、海嶺沈み込みとその後の沈み込み帯の温度構造の変化の様子を明らかにすることができると期待される.
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