研究概要 |
海嶺沈み込みは,沈みこみ帯の温度構造に対して重大な影響を及ぼすと考えられるにもかからず,そこで生じるマグマの化学組織への影響はほとんど解明されていない.また,海嶺沈み込みに伴う沈み込んだ海洋地殻の部分溶融は,太古代における初期大陸地殻の生成構造として重要なものとされ,国内外の多くの研究者の注目を集めている.北上山地の白亜紀火成岩類は、上部地殻物質の影響をほとんど受けずに固結し,なおかつ海嶺沈み込みの影響を保存している貴重な地質体である.したがって,北上山地の白亜紀火成活動の研究は,沈みこみ帯における海嶺沈み込みの影響の解明のみならず,地球史における大陸地殻の生成機構の研究にも大きな貢献をもたらすことが期待される.以上の様な背景から,本基盤研究では,北上山地の白亜紀火成活動の岩石化学的性質とその時間変化を調査し,沈みこみ帯火成活動における海嶺沈み込みの影響を解明することを目的として3年間の研究を行った.その中で最も重要と考えられるのは以下の3点である. 1.大陸地殻の形成構造の鍵を握ると考えられているアダカイト質花崗岩類は,北部北上帯だけでなく,南部北上帯〜阿武隈帯北東縁まで連続して分布し,“アダカイト前線"を構成している. 2.前期白亜紀深成岩類・火山岩類より前に活動したと思われる岩脈類には,海洋島型アルカリ玄武岩や“バハアイト"に類似したSrに富む安山岩などの,海嶺沈み込みに関連すると考えられる岩石が含まれる. 3.古第三紀の浄土ヶ浜流紋岩類は,アダカイトに類似した岩石化学的性質を有するため,古第三紀の東北日本における海嶺沈み込み現象の解明に重要な意味を持つ.
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