1.潮岬の玄武岩・はんれい岩・流紋岩22試料のRb・Sr含有量とSr同位体比、17試料のNd・Sm含有量とNd同位体比の分析・測定をした。玄武岩類の分析結果からは、潮岬の一連の岩石をもたらした原マグマは、親石性軽元素に枯渇し、島弧型とは全く性質を異にするものであること、また流紋岩は同位体的には堆積岩そのものであり、潮岬の岩石の全系列はこれらを結ぶ混合線上にのることが判明した。これらのデータは、前弧部では、島弧的ではない海嶺型玄武岩質マグマが形成され上昇していること、そのマグマの結晶分化と付加体堆積物の溶融・取込みで、玄武岩質から流紋岩質に至る多様なマグマが形成されることを示している。同様の機構が、堆積岩成分の寄与の高い外帯型花崗岩類の成因についても適用される可能性が高い。 2.西南日本外帯、紀伊半島の新第三紀花崗岩類10試料、四国の新第三紀花崗岩類17試料、堆積岩類5試料、九州の新第三紀花崗岩類11試料、堆積岩類2試料、屋久島の新第三紀花崗岩類3試料の主化学組成、Rb・Sr・Nd・Smの含有量の分析、および、O・Sr・Ndの同位体比の測定が進行中(29試料で完了)である。測定済みのデータからは、花崗岩類の酸素・ストロンチウムおよびネオジム同位体比がそれぞれ極めて密接な相関関係をもちながら、大きく変化すること、花崗岩類の起源物質が3成分系の2段階混合モデルで解析される可能性のあることが判明した。
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